メモログ

HCCIエンジン関連の雑記

nolf7984
2017/11/03 15:56


モーターショー絡みで話題に上ってもいたので、自分用の整理もかねて。

 

1 前書き

一般に、自動車用エンジンは二種類の機関にわけられることが多い、という前提で自動車用内燃機関の記事は始まることが多い。ただし、これからのHCCIの一般化に伴い、その書き方は通用しなくなると考えてよいだろう。

自動車用エンジンは燃料を燃やすことで動く。大抵はガソリン燃料とディーゼル燃料のどちらかを使っており、これまではそれぞれ違った燃やし方をしていたため、「ガソリン車」と言えば火花点火方式(=Spark Ignition=SI)であって、ディーゼル車と言えば圧縮着火(=Compression Ignition = CI)だというのが明確にわかるのである。

しかし、SKYACTIV-Xでは、HCCI燃焼(≒Homogeneous Carge Compression Ignition)をガソリン燃料にて実施し、圧縮着火により(プラグ併用とは言え)動作している。ガソリン燃焼であっても圧縮着火であるから、「ガソリン車=SI」「ディーゼル車=CI」という単純な図式が成立しなくなる。よってこれからは、「自動車用エンジンは三種類の機関にわけられる」と書き出すべきである。

普通に燃料だけでわければいいじゃんってなりそうではあるけれど。

 

2.内燃機関ってなんだよ(哲学)

一度、内燃機関とはなんぞや、というところからさかのぼって考えてみよう。

内燃機関は、「燃料をシリンダー内で燃焼させ、燃焼ガスを直接作動流体として用いて、その熱エネルギーによって仕事をする原動機(Wikipedia「内燃機関」より引用)」と定義できる。

熱エネルギーを燃焼により取り込むからこその内燃である。身近でよくある形態としては、ピストン-クランク機構に吸排気バルブを備えた形式の自動車用エンジンや、工場などで発電機としておかれたガスタービンエンジンもこれにあたる。

蒸気タービンとボイラによる火力発電所などはこれに当てはまらない。実際に作動流体として働く(膨張や圧縮により翼やピストンを動かし仕事を与えることを指す)流体は水蒸気であって、水蒸気を生み出すための熱源でしかないためである。こういった形式は外燃機関と呼ばれる。

 

さて、内燃機関には多くの利用手段がある。自動車はもちろん、非常用発電機や各種作業機械(建機から芝刈り機まで)の圧力・動力源。大型機関になれば、工場などの安定した電力源や、バイオ燃料と内燃機関の組み合わせでのFIT制度の利用による売電など。

当然のことながら、これらを実施するためには燃料が消費される。運用や商品として必要な仕様にもよるが、これまた当然ながらその燃料の消費量が少ないほうが好ましい。

では、どうすれば消費量は減るだろうか?これには二つのアプローチがある。

一つは燃焼過程の改善により効率を上げる方向であって、もう一つはそれが仕事に供されるまでのロスを減らす方向である。一般に前者はサイクル効率向上と言われ、後者は損失低減と言われることが多い。

 

3.燃費低減の努力
3.1 サイクル効率向上

さて、サイクル効率を向上させるにはどうすればよいだろう。

monappyで数式バリバリに使って解説するのも何か違う気がするので、おおまかに言うと

1.圧縮比をあげること

2.燃焼を一瞬で終わらせること

3.燃料に対し多くの空気を与えた上で燃焼させること

がキモになる。ただし、それぞれ達成するためには多くの障壁がある。そしてHCCIのメリットは、これらの手段を従来の限界よりも推し拡げることに成功した点にある。

それぞれの項目についてこれから見ていこう。

 1.圧縮比

皆さんご存知の通り、圧縮比を上げていくとノッキングが問題になる。シリンダ内で圧縮されることにより温度が上がり、火炎が伝播するまでの間にガソリンとの空気の混合気に勝手に火がつき、非常に高い筒内圧力と、圧力波による油膜切れでエンジンが破損してしまうためである。

燃料は温度が上がれば上がるほど事故着火しやすくなるため、圧縮比に比例してノックしやすくなり、結果、ハイオクガソリン(RON95以上)でも圧縮比14が事実上の限界である。これ以上を狙う場合、RONが100以上の物質、例えばETBEなどを主成分になるくらいまで、あれこれ添加する必要が出てくる。でもそれもうガソリンじゃないし、こういうのをそのままガソリン車に突っ込んでもいろいろ問題が出てくるので、広くは使われていない。

しかし、これはHCCIでは(限界はあるにせよ)問題にはならない。なぜなら、予混合圧縮着火が目的であるため、毎サイクルノックを起こしているようなものであるためである。何なら自着火が起きないサイクルがあることが問題になる(未燃HCの大量放出につながる!)くらいである。

しかし、それならなんぜ普通の車のノックはダメでHCCIは平気なのかというと、極端に混合気が薄く投入熱量が低いため、最高温度が上がらず最高圧力も低く抑えられ、機関への負荷が低くなるため。もう一つは、自己着火による圧力上昇率が、機関の構造的限界を超えないよう、初期条件をうまく制御しているためである。

自己着火自体はシンプルな現象であるため、HCCI燃焼を起こすだけならディーゼル機関にガソリン混合気を突っ込めば1900年代からできたはずだが(コンセプト自体も相当昔からあったような?)、近年になってやっと可能になったのは、構造限界を超えないようにしつつ自己着火を起こすという、クッソ面倒な制御ができるようになった事が大きく影響している。

実際、混合気と壁面温度だけで制御できれば一番いいのだが、それができないからマツダもスパークプラグを併用して、毎サイクルノッキングを起こすような形になっているのだろう。

 

 2.燃焼時間

HCCIの効率が良い理由は、燃焼時間が非常に短いことにもよっている。燃焼形態を制御できるのであれば、理論的に一番熱効率が良いのは、ピストンが上死点にあるときに一瞬ですべてが燃えきることである。

しかし、それは実際には難しい。混合気は、有限な速度でプラグ周辺から燃焼が始まるためである。一般に、ガソリン-空気の混合気では、常温常圧(25℃・1気圧)場では30~50cm/s、エンジン内部のような高温高圧場では1m/s~の燃焼速度を持っている。ここで、更にスワール(ググれ)やタンブル(ググれ)の影響により加速は可能であるが、それでもクランク角度で10deg程以上はピストンが動くことは見積もっておいたほうがいい。

更に、3項の「より多くの空気を与えること」と絡むが、燃料には一番燃焼速度が速くなる空気との混合割合があるため、何も考えずに空気量を増やしていくと更に燃焼速度は遅くなり、かえって効率が落ちてしまう。

HCCIはそんなの関係なく、ほぼ0時間で燃焼が完了する。火炎伝播は移流-拡散-化学反応の三段階を踏むプロセスであるが、HCCIは化学反応プロセスのみであるためである。実際にどの程度早いかというと色々アレだが、まぁYoutubeで探してみてください。

 3.空気量(リーンバーン)

燃料に空気量が多い少ないという言い方をしているが、そもそも何でそれは決まるのか。

ガソリンのようなCmHnで表現できる炭化水素燃料は、O2と結びついて、最終的に水H2Oと二酸化炭素CO2になる。このとき、すべての燃料を燃やしきるのに必要な酸素の量は、mとnの値から勝手に決まり、同時に、大気にはちょうど21%の酸素が含まていることから、どれだけの空気を燃料を燃やしきるのに必要であるかが決まる。

この条件について重量割合を考えてやると、燃料1gに対し、空気14.7gが必要になる。これを量論混合比といい、一般的なガソリンエンジンはこの前後で運転される。

が、実はより空気が燃料に対し多い(≒薄い リーン呼称するのが一般的 逆に濃い方はリッチとか言う)領域で燃焼させたい事情が存在する。

詳細は「サイクル効率」「比熱比」でググってもらうことになるが、仮に燃焼が上死点で一瞬で完了するならば、理論上こちらの方が取り出せる仕事量が多くなる。しかし、前述の燃焼速度の問題などもあり、あまり極端に薄くすることは難しかった。

HCCIではこれは問題にならず、化学反応が最後までギリ進行する程度の燃料濃度まで追い込むことが可能になり、大体燃料1gに対し燃料30gまで与えることが可能である。結果、同一の投入エネルギーでも燃焼温度が下がるため、比熱が小さい温度領域を使え、N2・O2がガスの主成分になるため比熱比も大きくなると、いいことづくめである。

 

疲れたのでここまで。まぁ、こんな感じでHCCIって有効なんですね。

重量当たり出力が下がるとかHC意外と多いとかいろいろ問題はありますが、まぁそれは後で書きます。

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