メモログ

プチ小説「楽器相談、ペット可。カミサマあり。」

bonkoturyu
2021/07/21 14:01

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俺は今、家を探している。理由は簡単。家を追い出されるから。

親にそろそろ一人暮らしをしてみたら?と言われ続けて十年。

実家に住んでる方が気楽だからそのままにしていたら、

とうとう親にも呆れられ、家を出されることになってしまった。

 

仕方がないので、最近はずっとパソコンで賃貸物件の一覧とにらめっこ。

ようやく見つけても先を越されてたり、高くなってたり。

最近は段々諦めかけてきた。家を出されたら友達のとこでも回ろうかな。

仕事も探さないと暮らすことも出来ないが。

 

今日もまた朝からパソコンで探していると、良さそうな物件を見つけた。

『楽器相談、ペット可。単身者限定。委細、要相談。』

家賃も相場より安いし、駅からも近い。ここなら仕事も探しやすそう。

おまけに最初の3ヶ月は家賃が要らないらしい。

……何で物件が残ってるんだ?

とりあえず、不動産屋に連絡して、部屋を見てみることにした。

 

「こちらの部屋になります。

 あ、曰く付き物件ではないので安心してくださいね。」

「あ、はい。」

 

”そういう”物件だった場合には事前に通知しないと駄目らしい。

見る限りは普通の部屋。フローリングだし、壁も白い普通のもの。

エアコンも付いてて、天井とかも特に気になるところはない。

風呂とトイレも別。押入れも見たけど何もない。

 

「何でこの物件って空いてるんですか?」

「えーと、理由がよくわからないんですよ。

 皆さん喜んで契約はされるんですが、すぐに契約取消ししてしまうので。

 何故か怖がったり、ノイローゼになったりとか。かと思ったら、

 喜んで住まれてる方も居たりして。人によって全然違うんです。

 ケモノを見たとか、悪夢を見たと言われたこともあります。」

「そうなんですか……。」

「なので、もうこの際なので、皆さんが契約取消しすることの多い3ヶ月は、お試し期間ってことにしました。その間に気に入ればそれで良し、そうでないなら契約取消ししますよ、という形です。」

「随分お得なんですね。」

「ここまでやっても、大体の方は住まないので、仕方なくです……。」

 

ため息を付きながら説明をしてくれている担当の方は、とても残念そうだ。

 

「じゃあ、とりあえず住んでみたいです。」

「はい、わかりました。何かあれば言ってくださいね。期間は3ヶ月。

 3ヶ月以内であれば、契約取消で引っ越す際、費用も補助しますよ。」

 

そう言われてトントン拍子に部屋を契約した。

まだ何も知らないままで。

 

『フフフ、今度はこの子なんだね』

『どんな奴なんだろうな』

『まぁいつもみたいに逃げちゃうんじゃないの?』

 

そんな声がしていたのも気づかなかった。

 

引っ越して荷物をある程度整えてから。

 

俺は近くのスーパーに買い物に行った。

少しづつ必要なものから買い足しているところ。

 

コップと皿はもう十分だし、調理器具も大丈夫。

調味料はまだ足りないのはソースかな?

スマホの買い物メモを見ながらスーパー内を散歩。

納豆や豆腐がある棚に近づいたときに、急にスマホが暗くなった。

 

(あれ、触ってなかったから消灯した?)

 

電源ボタンを押しても、画面は暗いまま。代わりに頭に声が響いた。

 

『キャベツ!キャベツ!』

『いやココはリンゴだろ!』

『サツマイモがいいな~。』

 

(何の声?いや、気のせいだよな?)

 

もう一度スマホの電源ボタンを押すと、スマホの画面が表示された。

あの声は何だったんだろう……。気になりはしたが、気にしないことにした。

 

「今日は何食べようかな……。野菜炒めとか作ろうかな。」

 

買い物かごにキャベツを入れて、会計レジに並んだ。

自宅に帰り、冷蔵庫に買ったものをしまう。

 

夕食も食べ、ベッドに横になり、目を瞑ると急に声が聞こえる。

 

『やったぁキャベツじゃん!俺の勝ち!』

『今回は勝っただけだろう。』

『いやいや、サツマイモだって昨日買ってたじゃん。』

 

また声が聞こえる。何なんだ?薄っすら目を開けると、天井に何かが見えた。

そこには3匹のイヌのようなもの。

 

「イヌ……?」

 

『あ、やばい。俺らが視えたみたい。』

『もうバラしても良いんじゃないか?』

『え~、もうちょっと黙っておきたかった。』

 

そのイヌたちは、俺の目の前まで空中を駆けてくる。

 

『俺は、銭助(せんすけ)』

『ワシは、鼓一郎(こいちろう)』

『私は、扇(おうぎ)』

『俺らは、この建物に住んでる、カミサマ。』

『信じるかどうかは任せるが、事実は事実。』

『私は別にどっちでもいいけど。あ、お供え物は大歓迎。

 どうせならサツマイモがいいな。』

 

わいわい喋りかけてくる3匹のイヌたち。

 

「待って、嘘だろ。イヌが?」

 

『どうやらキミには僕らの姿がイヌに視えてるみたいだね。』

『こないだの奴は、ワシらを見てキツネとか言ってたな。』

『お化けとか、タヌキと言われた事もあったわね。失礼しちゃうわ。』

 

「えーと、カミサマ?幽霊とかじゃなく?」

 

『事実だよ。俺らはカミサマ。』

『厳密には、ちょっと違うところはあるがな。』

『面倒だからカミサマでいいじゃない。私はそう呼ばれる方が好きよ。』

 

「何でこの部屋に居る?」

 

『俺らが一番、居心地のいい部屋だから。』

『ちょっと考えたら当然だと思うが。』

『日当たり良好、土地のエネルギーの集合地。サイコーじゃない?』

 

「……じゃ、もういいや。俺に何か関係ある事は?」

 

『俺らにあんまり驚かないんだね。キミに対しては、"今は特に無い"よ。』

『強いて言えば、住んでいる者しかワシらが視えない事くらいか?』

『前に住んでても、この部屋から縁が切れると視えなくなるのよね~。』

 

何かもう、超常現象過ぎて諦めた。空中を飛ぶ3匹のイヌたちが居て。

ある意味同居みたいな状態になってる部屋らしい。そりゃ皆、契約解除したりするわ。

特に影響無いとか言ってたし、とりあえずは良いか。

 

「俺に対して何も影響無いなら、もういいや。よろしく。」

 

『うん、よろしくね。俺らは何も食べなくても大丈夫だから。』

『土地のエネルギーで十分に満腹だしな。』

『私は、サツマイモのお供えがあると嬉しいかな。切りたてのやつ。』

 

……この部屋には、イヌのカミサマ?が住んでたようだ。

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普段はエンジニア。ゲーム、絵、小説やらを趣味で作ったりしてる人です。
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