メモログ

女子校に通ってた僕がいじめっ子JKたちに復讐する【1話】


 僕の名前は八景島《はっけいじま》亜昼《あひる》。

 わけあって女子校に入学したたった独りの男子生徒である。

 

 そんな僕は女子校生たちからいじめを受けている。

 否! こっぴどくいじめられ通してきた高校生活だった!

 

 なぜ過去形なのかだって?

 そりゃ、その僕の一度きりの高校生活が今まさに幕を閉じようとしているからだ……


 女子高生たちにいじめられるなんて、最高じゃないか! そう思う人も中にはいるかもしれない。

 

 でもだ。

 もし女子たちに学ランやらシャツやらをもぎ取られ、パンツ一丁にさせられた挙句、屋上のフェンスの上に立たされているとしたらどうだろう。

 羨ましいと思う気持ちも吹き飛んだじゃないかな。少しは同情する気持ちになってくれたかもしれない。

 

 えっ、それはたいそうなご褒美だって?

 

 じゃあ、これならどうだろう。

 冬空の下、夕日に染まる放課後、どんなに泣き叫んでも誰も助けてくれない状況だとしたら……

 

 女子たちは哀れな見世物でも見るかのような目で僕を見つめている。いや、もっと酷い。それは人間以下のもの、例えば下水道に住むドブネズミでも見るような目だ。

 

「こっちに来たら殺すからな!」

 

 そう言ったのは冬美という女でクラスのリーダー的存在だ。黒髪でストレートの長い髪。色が雪のように白くて、見た目だけなら文句なしの清楚系美人なのだが、口を開いた瞬間に悪魔となる。

 

 何より彼女の発想力は天才的。

 

 ━━僕を屋上のフェンスの上に立たせ、各自持参したおもちゃの水鉄砲で的にして射撃大会をしよう!

 

 そんな発想、完全に常軌を逸している。

 

「さっさとはじめるぞ。あひるちゃんよぉ! 寒いんだから待たせるなよ」

 

 冬美の威勢良い音頭に、女子たちがくすくすと嘲笑で応じる。

 

 僕はがくがくと膝を震わせながら、身を縮めてフェンスにしがみついた。

 前に行くと殺される。いや、きっと脅し文句には違いないが、死より恐ろしい罰が待っているはずだ。

 当然、後退なんてあり得ない。少しでも足を踏み外せば、校舎の四階から地面に真っ逆さまというこの地獄的状況。

 

「ほら、立ちなよだんしぃ。的が小さくて当たらないよぉ」

 

 そう言ったのは、ゆるめのパーマヘアに甘いタレ目が特徴的な春香だ。特徴は胸がでかい。

 しかし、そのほわんとした雰囲気から繰り出される目が覚めるようなボディブロー(文字通り)は眼帯のおじさんも食指を動かすほどの強烈さだった。

 

 冬美もそうだが、春香が特に顕著なのは、越えてはいけない線を軽々と飛び越えるようなところだ。

 今日も、他の女子たちがちゃちな水鉄砲を持参したのに対し、春香はウォーターガンと呼んだ方が良さそうなビックサイズの水鉄砲を両手に抱えている。

 

 そこから放たれた水弾が、縮こまる僕のつむじに直撃した。

 凄まじい水圧だ。そして冷たい。

 

「うわっ⁉ おっ! あわわわ」

 

 水圧に押され、フェンスの上の僕はバランスを崩した。

 それと同時に、女子たちの楽しげな歓声が上がる。

 

 死ぬ。本当に死ぬ。シャレじゃない。

 僕は丸太にしがみつく猿の様に必死にフェンスへと抱きついた。

 

「やめて! もう許してください」

 

 僕が泣き叫ぶと、まるで火に油を注いだように、女子たちのはしゃぐ声が一段と大きくなった。

 

「ちょっとまじ冷めるから、そういうのやめてくんない? まだはじまってもいないんですけどぉ!」

 

 僕に冷たい水をちょろちょろとかけながら近づいてきたのは、千夏というギャル系だ。

 小麦色の肌に金髪のツインテール。ベージュのカーディガンをいつも腰に巻いている。時代遅れと言ってやりたいが、それが彼女のスタイルのようなのだ。

 

「ほら、早く立ちなって。立てよ!」

 

「う……ぐす……」

 

 その剣幕に屈した僕が恐る恐る立ち上がろうとすると、彼女は僕のブリーフの股間部めがけてゼロ距離で水鉄砲を発射した。

 彼女はきゃはきゃはと笑いながら、

 

「こいつ漏らしてるんですけど。まじキモ〜い」

 

 こんなことは日常茶飯事だった。

 何せここは女子校。生徒に男子は僕だけというツッコミどころ満載のあり得ない状況なのだ。

 入学前は無数のうら若き女子たちに囲まれるという華々しい学園生活を期待していたのだが、あの時の希望はどこへやら。

 結局のところ、元々華奢で気の弱い僕はこれ以上とない恰好のターゲットとなったわけだった。

 

 しかし、今日はやばい。本当に死ぬ。

 彼女たちもエスカレートしすぎて、もはや正常な判断ができなくなっているのだ。

 それでもだ。流石に殺しはしないだろうという甘い考えがまだ僕にもあった。

 毎度お決まりの涙と情けない声で許しを乞えば見逃してくれるかもしれない。

 

 そう思って口を開きかけた時だった。

 

「ちょっとあなたたちっ! 何やってるの⁉」

 

 僕を取り囲む女子たちの、さらに奥の方から鋭い声があがった。

 はっとして僕は顔を上げた。

 気がつくと、屋上の扉が開いていた。

 

 なんと扉の前には担任の教師が立ち尽くしていたのだ。

 驚きの表情を顔に貼りつかせている。

 担任の名前は舞浜。知的な印象漂う眼鏡の若い美人教師だが、僕は嫌いだった。

 この女、僕がいじめられていることを知りつつ、無視を決め込んできたのだ。学校らしいことなかれ主義を体現した、もはや共犯的存在だと僕は日々恨めしく思っていた。

 

 そんな恨みはあるものの、さすがに彼女も今日ばかりは見過ごせないと思ったのだろう。一人の子どもが今まさに死の淵に立たされているのだ。

 

「これは、どういうこと? 説明しなさい」

 

 舞浜が厳しい口調で生徒たちに迫った。

 

「あの……これは……」

 

 リーダー格の冬美が口ごもる。

 二十代前半のまだ若々しさを持つ舞浜は春香よりさらに巨大な胸の前で腕を組んだ。

 むちむちボディから放たれる大人のフェロモン……は、ともかく。今日ほど担任を頼もしいと思ったことはない。

 

「ねぇ、どうして誰も説明しないの?」

 

「……」

 

「これはどう見てもいじめでしょ? 違うの。あなたたち!」

 

「そうです……」冬美は目をそらし、不貞腐れたような顔をした。「すぐにやめまーす」

 

 まったく心のない声で冬美が告げた。

 反省うんぬんはともかく。

 

 助かった。

 

 僕はふぅっと息を漏らした。

 しかしそれは早計だった。とんでもないところに魔物は潜んでいたのだ。

 

 僕がフェンスから足をおろしかけたその時、

 

「誰がやめて良いっていったの?」

 

 そう言ったのは紛れもなく担任の舞浜だった。

 我が耳を疑う以外にどうしろというのだ。

 僕は仰天してその顔を見る。

 彼女はまるで女王様のような目で僕を見ると、ピンク色の小さな舌で下唇を舐めた。

 

「私もこういうのやってみたかったのよね。見てるだけじゃつまらなくなくなっちゃった」

 

 受動的共犯どころの話ではない。

 これまでそんな性癖を隠し通して来たとでもいうのだろうか。

 当然、僕の思考回路はこの急展開についていけるはずもなく。

 

「へっ?」なんて呆けてる間に、

 

「総員、配置につけ!」

 

 舞浜先生は屋上に響き渡る勇ましい声で号令をかけた。

 ざっと一列に並ぶ女子生徒たち。

 

「撃ち方用意!」

 

 舞浜先生のかけ声で、完全に訓練された兵士のように同時に水鉄砲を構える女子たち。

 

 僕は凍りついていた。

 頭の中が真っ白。

 舞浜先生が大きく息を吸い込む様子がスローモーションで見えていた。 

 

「フルバアアアァァァストォッッ!!」

 

 つんざくような声が校舎全体に轟いた。

 

 その後のことはよく覚えていない。

 

 とにかく四十人分の水弾が僕の身体に直撃した。水圧に押されたというより、僕はつるっと足を滑らせたのだ。情けない僕に相応しい情けない最期だ。

 

 あとは真っ逆さまの世界。

 夕焼けが綺麗だった。

 よりによって走馬灯に見たのは、これまで彼女たちから受けたむごいいじめのシーンばかりだった。

 

「くそっ、復讐してやりたかった……」

 

 死にゆく僕は呪詛の言葉を心の中で繰り返した。

  • 公開日時:2018/07/08 13:21
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