メモログ

人間リコール


はじめまして。わたしがあなたの魂です。

 

黒い髪を後ろでまとめて団子にし、眼鏡をかけてグレーの細ストライプのスカートスーツを着た女の人が言った。ああはじめまして、と反射でボソッと呟いて小さく会釈すると、女の人もおんなじように会釈を返してくれた。すぐに机の向かい側に座り、書類をパラパラめくり始める。三十代にはなっていないだろうか。ちょっと小柄で中肉。なんの個性もない、東京にも宮城にも熊本にも奈良にもいそうな、まさにモブBといった顔である。なんのひねりもなく自眉をなぞっただけみたいなアイブロウ、奥二重気味だけどギリギリ二重の重ためのまぶた、短いまつげ、ベージュピンクの口紅が塗られた分厚めの唇。鼻は低いけど鼻筋が細くて、小鼻も目立たなくて、全体に小ぶりで、わりときれいかもしれない。全体評価、中の下。まじまじと顔を見つめ続けるわたしを全然気にせずに、女の人はバインダーに挟んだなにか書類みたいなものの空欄を埋めている。

 

あの、ここはどこですか。

 

わたしが聞くと女の人は顔を上げて、はあ、と間の抜けた声で呟いた。鉛筆を動かす手が止まる。まだわかってないのか、っていう顔をしている。残念ながらわたしは物心ついたときからずっと勘が鈍くて、物分かりが悪いのだ。

 

あなたは無差別審査の対象に選ばれました。あなたには身体チェック、口頭でのテストなどを受けてもらいます。

 

女の人が決まり文句みたいに慣れた口調で言う。女の人はすぐにまた鉛筆を走らせ始める。わたしはそれ以上なにも言えなくなって、開けっ放しでいた口を閉じて、また女の人の顔を見つめ始めた。コーンフレーク、コーンフレークみたいな顔だ。あってもなくてもいいし、まああったらあったで食べるけど、絶対ないといけないってものではない。世界からポンと消えても気づかない人の方が多い。そういえば昔何回か食べた無印のコーンフレークは美味しかった。いつのまに廃盤になってたんだろう。わたしが好きになったものって、いつも世間で人気がなくてすぐ廃盤になってしまう。ぼんやりと無印のザラザラしたコーンフレークの乾いた感触を思い出しながら座っていると、部屋の重たいドアが静かに開いて、細身のおばちゃんが体を半分くらいだけ現して、身体検査をしますので、と小さいけれどはっきりした声で言った。おばちゃんがさっと背中を向けて去っていくので、わたしは慌てて立ち上がり後を追う。立ち上がった拍子に椅子をこかしたので女の人がちらっとわたしを見た。急いで椅子を立て直して走り出したらおばちゃんはめんどくさそうに首だけ振り返ってわたしを待っていた。

  • 公開日時:2017/12/07 21:56
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コメント


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@syuribox

解説求む。頭が悪いせいか、いまいち理解できなかった。悲しい

2017/12/08 04:15:46

アイコンは本人です。もう子どもではいられないのに生きていることにあっぷあっ...
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